東近江市にある“道の駅”「あいとうマーガレットステーショ」に隣接した「あいとうエコプラザ菜の花館」を訪ね、東近江市 生活環境課の田中和則さんにお話をうかがいました。 (環境学習推進員 山本悦子)
◆「あいとうエコプラザ菜の花館」が作られた目的は?
(田中さん)近年、地球環境はさまざまな環境問題を抱えています。東近江市では、子や孫の代まで安心して暮らせる環境を後世に残すために、地域内資源循環型の町づくりを推進しています。
2005年1月にオープンした「あいとうエコプラザ菜の花館」は、住民主体による資源回収「あいとうリサイクルシステム」と、地球温暖化防止に寄与する「菜の花エコプロジェクト」を含む「地域資源循環システム」の拠点として建てられました。
◆「あいとうリサイクルシステム」とはどんなシステムですか?
(田中さん)缶やビン、廃食油等の7品目11種類の資源を、第2日曜日を回収の日として、各家庭から自治会の集積所へ、そこから菜の花館へ住民さん自ら搬入されるというものです。
このしくみは、自治会と行政とボランティア団体とが一体となって活動しているのが特徴です。その後、缶やビンなどはメーカーに引き取ってもらって再資源化しています。
◆「地域循環システム」は具体的にどんなシステムですか。
(田中さん)転作田で栽培する菜の花や水稲作の過程ででるもみ殻や剪定枝・木くずの再資源化に取り組んでいます。
菜の花は、栽培→搾油→学校や家庭の料理に使用→廃食油(市販油を含む)を回収して精製→バイオ・ディーゼル・フューエル(Bio Diesel Fuel 軽油代替燃料)を作る→これを市の公用車や循環バス、トラクター、ディーゼル発電機などの燃料に利用しています。搾油時にでる油かすは、土壌還元に用います。
現在全国に広まっている「菜の花プロジェクト」は、平成10年(1998年)に東近江市(旧:愛東町)から始まったのです。
また、もみ殻や剪定枝は、炭化させてくん炭を作り、土壌改良資材として利用するとともに、炭化時にでる排熱は「菜の花館」や「あいとういきいき元気館」の暖房等に利用しています。
◆どれくらいの量の廃食油が集まるのですか。
(田中さん)廃食油は、一般家庭や学校給食の油を集めているのですが、旧愛東町からは1ヶ月に約300リットル集まっていましたが、東近江市になってからは約1500リットルが集まります。
◆バイオ・ディーゼル・フューエル(BDF)としての利用は拡大しているのでしょうか。
(田中さん)今年8月からは市内を走る循環バスにも使われます。しかし、今は行政の公用車等に使用する量しかなく、市民の方々に使用していただけるだけの廃食油が集まらないのが現状です。将来、廃食油の回収量が増えれば、市民の方に還元したいと考えています
廃食油の粘度は、軽油と比較すると約20倍も高いので、軽油のレベルまで粘度を下げる必要があります。廃食油を投入して、エステル交換反応(廃食油から粗製BDFとグリセリンに分ける反応)により3日間でバイオ・ディーゼル燃料に変換します。
精製プラントの能力は、1回(1日)200リットルの廃食油をバイオ・ディーゼル燃料 約200リットルに変換できます。月間20日稼働として月4000リットルが可能です。
菜種乾燥調整プラント
投入から完成まで3日間の精製サンプル
ポリ容器はBDF完成品
◆この施設は環境学習にどのように利用できますか。
(田中さん)「菜の花エコプロジェクト」や資源循環型の取組みの研修はもとより、生活に身近な食用油を素材とした実験やプラントの見学など学習していただけます。
菜の花館では「視察受け入れメニュー」を、研修、見学、体験という3つの区分で用意しており、区分ごとに4、5個のメニューがあります。それぞれのメニューを単独で学習するとこもできますが、これらを組み合わせて実施することもできます。内容は、環境学習を企画する人からの相談に応じて決めます。
学習のお申し込みは、実施日の2週間前までに、所定の用紙で当館にお申し込みいただきます。資料代等の経費として有料となります。料金等詳しくは、お問い合わせください。
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【視察メニューの概要】
1.研修(各研修とも、2項に示す施設見学を含みます)
A.資東近江市資源循環システム研修(90分)
B.菜の花エコプロジェクト研修(60分)
C.BDF研修(40分)
D.くん炭(15分)
2.見学
E.菜種の乾燥・搾油・精油施設
F.BDF(バイオディーゼル燃料)精製施設
G.せっけん製造施設
H.炭化プラント、くん炭製造施設
3.体験
I.菜種搾油実験(30分)
J.菜種収穫体験(90分〜:季節限定)
K.BDF製造体験(90分)
L.石けんづくり(1日)
M.ろうそくづくり(45分)
【取材者からひとこと】
持続可能な社会づくりのためには、全国に先駆けて愛東地区で取り組まれた「地域循環システム」から学ぶべきところが大きいと感じました。
ごみだと思っているものが資源として循環するプロセスを見て、実感することで、毎日のごみの分別意識が高まりそうです。 |