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学習プログラム 取材記録 取材日:2010/10/27
団体名・名前 A1004. 一般社団法人 比良里山クラブ
 雨降る秋の一日、大津市木戸コミュニティセンターへ、志賀中学校の里山学習を企画実施された「一般社団法人 比良里山クラブ」の授業の場を訪問し、代表理事の三浦美香さんにお話を伺いました。

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◆「比良里山クラブ」は2003年に設立され、丸7年(法人化して1年)ですね。活動のフィールドとなる「まほろばの里」はどんなところですか。

(三浦さん)比良の一帯は古くから獣害の著しいところで、江戸時代末期に造られたという「シシ垣」も残っています。荒れていた雑木林を整備して広場をつくり、石窯や薪小屋なども設置しました。大勢が集まって、おいしいものを食べるイベントも楽しめます。今はみんなでクラブハウスを建てているところです。近年ナラ枯れが発生し、大きなアベマキやクヌギが何本も被害に遭いました。赤シソの畑や、里山付き貸し農園「L-farm比良」もあります。今年は果樹園にヤギも来ました。
    まほろばの里

 ここは父の所有地で、まほろばの里というネーミングも父がしました。かねてより、地域には気楽に人が集える、開かれた場所が必要だと考えていたようです。ここは、集落から程よく離れていて、一息つくのにはいい場所みたいです。地元のお年寄りが、ふらっと立ち寄られます。一方で、新住民の方が「ここは何かな?」と興味を持って、のぞいたりします。比良山を背に、前方には扇状地形に開かれた農地。その先に、びわ湖が一望できます。山と湖が接近した、この地域特有のロケーションが楽しめて、これは何物にも代え難い、地域の財産です。
    比良の周辺風景

◆どんなきっかけでクラブの活動を始めたのですか。
(三浦さん)私はここ比良で生まれ育ち、結婚を機に京都に住みました。子育て中に里帰りをし、初めて故郷のことを客観視できたように思います。幼い頃に見た里山と、どこか違う様子が気になりました。ごみ処理場ができ、川はコンクリートの三面張り、シシ垣は壊れていました。何より、地元の人の記憶から、里山の存在が忘れ去られていく様を見て、淋しく感じました。
 何か自分にできることはないかと思っていたその頃、折しも里山ブームで、滋賀県内外のいろんな団体の活動に参加してみたんです。「膳所の山辺を愛する会」や「やぶこぎ探検隊」、「おうみ木質バイオマス利用研究会」、あちこちにいろんなグループがありました。行く先々で出会いがあり、皆さんとても親切に受け入れて下さいました。いろんな実践者の方と知り合い、そのうち協力してくれる人が集まったので、任意団体を立ち上げました。まずは地元の自治会館で、獣害の講習会を開催したり、子どもたちのいきもの観察会などを続けてみました。
     ヨシ刈り

◆活動内容をもう少し詳しく教えてください。
(三浦さん)最近では、2009年大津市新パワーアップ夢実現事業として「比良の里山に集まらんせ」を実施しました。
 このイベントは4回シリーズで、6月は「里山を知る」。地域に昔から伝わる「虫送り」の行事を参加者自作のキャンドルで演出し、シシ垣の石組み実演やライトアップ、農業用水路での小水力発電などを行いました。
    虫送り

 8月は「里山を味わう」。地元の農産物を農家からご提供いただき朝市を開きました。自分たちで育てた赤シソを使って、ジュース作りもしました。
     赤シソのジュース作り

 11月は「里山を観る」として、自然観察とゲーム、焼き芋などを楽しみました。
     イベント風景

 1月は「里山を使う」で、薪ストーブや足湯を実演し、薪割りと火熾し体験をしてもらい、「お山にはお金がいっぱいおちている」という座談会も行いました。手打ち蕎麦の試食や石窯ピザも楽しみました。
     里山座談会

 他にもマイ箸やバードテーブル作りなどのクラフト教室、子どもでもできる山の整備作業、家族参加のサマーキャンプなど、いろんな活動を実施しています。
     サマーキャンプ

◆すごく幅広いのですね。大勢の方が活動されているようですが、どんなメンバーが集まっているのですか。
(三浦さん)当初からそうなんですが、当会は来るもの拒まず、去る者追わずの精神でやっています。参加者の年齢も様々で、0歳から85歳までいます。ここで活動する中で、自分のフィールドを持って、新たに活動を始めた人もいます。
       種まき
 ボランティアさんは20人から30人いますが、普段のメンバーは少人数です。「この場で何かやりませんか」という呼びかけで、自然にその都度いろんな人が集まってきました。木を伐る人、物作りをする人、指導に回る人、子どもが好きな人、料理が好きな人、農作業が好きな人、研究が好きな人という感じでしょうか。
     石窯の屋根づくり
          
◆子どもの参加も多いみたいですね。キッズクラブにはどんな子どもたちが集まっていますか。
(三浦さん)今までは地元の小学生を対象の中心にして活動していましたが、これからは就学前の幼児を受け入れたり、大阪・京都・大津市街地などからの参加者も入会できるようにします。現在では、webや口コミの効果でどんどんエリアが広がっています。特にL-farm比良の開設で、若いファミリーの参加が増えてきたので、そのあたりもターゲットに、新展開に期待しています。
     バードテーブルづくり

◆その貸し農園「L-farm比良」はどんな仕組みなのでしょう。
(三浦さん)ただの貸し農園じゃなく、「里山つき菜園セミナー」という表現をしています。4メートル四方を1区画として今年度から貸し出しています。参加者は若い夫婦世代と子どもが多いですね。親が農園で作業している間、子どもは野山を走り回っています。
      L-farm比良
 ここは獣害が大前提の場所です。一度被害に遭うと、シニア層の方はあきらめて来なくなることもありますが、意外にも若い世代は工夫します。子どもにとっても、家の中とは違う両親像を見る機会を得るようですね。「パパ、すごい!」なんて、父親の威厳が保たれる場になっているみたいですよ(笑)。公園感覚で、お弁当を持って楽しんで、泥んこになる団らんの場です。
    休日の畑作業
 作物づくりには地元のお年寄りからレクチャーを受けられるし、道具も肥料も現場調達できます。野菜づくり以外にも年間を通じて、シイタケ栽培、ハーブ摘みとお菓子づくり、山菜採りと天ぷらパーティなどのオプションもあります。
 これから耕作放棄地が増えていかないためにも、農地所有者が気持ちを前に向けていける起爆剤になればと願っています。「こんな農地の活用方法があります。協力してくれるこんな人がいますよ」というような提案ができればと思っています。

◆今年は3年越しで開発された赤シソジュース「ヒラペリラ」が大人気だったそうですね。
(三浦さん)そうなんです、商品完成から2週間で在庫がなくなりました。今まで商品化される事を待って下さっていたファンの方があればこそ、実現できたと思っています。当初は赤シソの葉を、自家製ジュース用にお分けしていました。そのうち「一年中飲みたい」という要望が出てきて、「これはもう商品化するしかないなー」と。いろいろ検討した結果、清涼飲料メーカーに委託するかたちになりました。摘みたての葉をふんだんに使い、レシピを何度も作り直し、やっと納得のいくものが完成しました。事業としてはまだまだですが、今年はお世話になった方々への御礼と考えています。来年はもっと多くの方に知ってもらって、販路を開拓していきたいと思います。
     ヒラペリラ
 そもそも赤シソ栽培の背景には、獣害問題があります。これもまた、山際の農地が元気になるようなきっかけとなればと思っています。そんなストーリーつきで売り出し、消費者にも共感してもらうことが狙いでもあります。売り上げは里山の保全と子どもたちの環境学習に回す予定です。
 そんなわけで、このヒラペリラという赤シソジュースは、どこにも真似できない商品です。地元の人の興味も少しずつ向いてきました。赤シソの栽培は、いずれは地元に任せられたらいいなと思っています。
      赤シソ摘み取り

◆活動の広がりがすばらしいですね。その活動計画はどのように立てているのですか。
(三浦さん)そんな立派な計画などはなくて、やりたいことをその都度実現してきただけです。どんどん広がって、「そろそろひとつにしては?」とも言われるけれど、大きな目で見たらひとつなんですね。一歩進めたら、次のことへ進化させたいのです。
 一番大事にしたいのは、シシ垣の保全活動です。これは立ち上げ当初から着目してきたことです。シシ垣とは江戸時代に築かれた古い石積みです。野生動物と人が折り合いをつけた境界線。ここの里山のシンボルであり、キーポイントです。これまでも子どもたちの活動には、わざとシシ垣沿いをコースに選び、歩いてきました。まずは「これ何やろう?」と気づいてもらう。そして、先人たちが残してくれた、重要な里山文化財である事を知り、名前も覚えてもらうようにしています。
 現状はシシ垣が壊れ、獣害も頻繁に起きています。なぜこんな事態になるのかを皆で考え、シシ垣をどう修復するのか話し合って行きたいと思います。このあたりの里山は私有林が入り組み、境界が複雑で、一斉に進めるのは容易ではありません。少しずつ区画を決めて、続けて行く事を考えています。『シシ垣トラスト』のような取り組みができたらいいのですが。
    シシ垣
         
◆今後の夢を聞かせてください。
(三浦さん)いつもほとんど思いつきで活動していますが(笑)、そんな中で、いろんな協力者が集まって来てくださいます。それと、もう自分たちの中だけで活動を完結している時ではないですね。いろんな団体が手をつないで協力し合う時代に入りました。現代の希薄さの結び直しです。私たちといろんな人が協力し合ってできることを整理して、ひとつでも結果を出したいと思います。
    山の整備


■□■取材者からひとこと■□■
 次々とおもしろいことにチャレンジするそのパワーはどこから来るのか、以前から不思議に思っていましたが、取材してみて熱い想いとバイタリティに圧倒されました。たくさんの人の協力が得られているのは、一緒に活動すれば、もれなく“楽しい”がついてくる、と思わせるからに違いありません。自分が楽しみながら地域を元気にする取組を、これからもいろんな方をつなげながら発展させていってほしいと思いました。
(環境学習推進員 南村 多津恵)