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お知らせ

琵琶湖上・沖島で「未来を拓く人育て・環境学習交流フォーラム」が開催されました
* 全ての写真が表示されているページを見るには、「県域団体ブログ http://ohminet.shiga-saku.net/e1120595.html 」をご覧ください。

 2014年12月20日、「未来を拓く人育て・環境学習交流フォーラム」が開催されました。このフォーラムは、琵琶湖に浮かぶ沖島での現地視察と、2014年11月に岡山市で開催されたESDユネスコ世界会議の成果を学びながら、県内外で環境学習に携わる方々が交流を深める目的で実施されました。ここでは当日の様子をお伝えします。

午前10時、約40名の参加者が船に乗りこみ、大津港を出航。沖島に向かう船内にて、滋賀県立大学地域共生センター助教授・上田洋平氏に沖島の基本情報をレクチャーしていただきました。

「沖島は近江八幡の沖合1.5km、琵琶湖に浮かぶ有人の島です。湖上に浮かぶ島で人が住んでいる島は非常に珍しく、日本では沖島だけ。さらに、島内に小学校と幼稚園があるのは世界でも沖島だけです」

「島内には車が一台も走っていないことでも有名で、島内の移動には三輪自転車が使われます。島全体が山林に覆われているため、漁港付近に家々がひしめきあっています」

「沖島の歴史は800年以上前、平治の乱で敗れた源氏の落武者が流れ着いたことが始まりとされ、湖上交通の要所として発展してきました。古くから漁業が生業として盛んでした。多い時で800名いた住民が、様々な要因によって現在では360名ほどにまで減少しています。自然豊かな沖島は学術的にも価値ある島として注目を浴びており、より多くの人に沖島の魅力を知っていただき未来につながる沖島を目指して、島民の方々が活動しています」

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 1時間余りで船は沖島漁港に到着し、漁業会館にて沖島漁業協同組合の森田正行組合長から湖魚料理の解説をはじめ沖島独特の漁業や島民の生活、後継者不足問題などについてお話していただきました。

お昼ごはんは、琵琶湖の恵みがたっぷり詰まったお弁当。湖島婦貴(ことぶき)の会のお母さんたちお手製です。

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昼から島の暮らし探訪に繰り出しました。

この日はあいにくの雨でしたが、沖島小学校で長年教鞭をとられていた片山啓介先生が案内して下さいました。ところどころで立ち止まってはその場所にまつわるエピソードをお話ししてくださいました。

狭い路地を行き交う人々、軒先にぶら下がる玉葱、食器を洗う物音、話し声など、どこか懐かしい昔ながらの暮らしの息づかいが感じられ、近年の都市生活では失われつつあるような地域のぬくもりがあります。

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 再び漁業会館に戻り、株式会社日吉(以下、日吉)の梶田由胤氏に「沖島のこれからに向けて」というテーマで講話をしていただきました。

「私たち日吉と沖島の関係は1982年に沖島島内に汚水浄化施設が竣工されて以来続いています。浄化施設及び中継ポンプ場の維持管理や工事、さらには廃棄物の収集運搬といった業務を通じて、日吉は沖島に関わってきました」

「滋賀県の観光資源としても知られる沖島ですが、琵琶湖の水質悪化・外来魚問題により生活の糧である漁業が大打撃を受け、若年層が島を去り、人口減少が急速に進み、高齢化に拍車がかかっています。そこで十数年前に、島の将来像を皆で考える『沖島21世紀夢プラン実行委員会』が発足し、日吉が島の活性化に向けた取組を進めることになった経緯があります」

梶田氏は協働のための土台作りからアイデア出し、島の資源活用に至るまで様々な面で関わってきたなかでの苦労・成果を語られました。

「活性化で目指すべき目標は『人が住む沖島・琵琶湖の漁業の存続』です。そのためには、子や孫に引き継ぐための資源・産業を構築・整備し、沖島の総収入増をはかり自活できる体制を整備し、後継者を育てることが必須です。これまで沖島は第1次産業(漁業)で生計をたててきました。これに加えて製造・販売といった第2次・第3次産業を沖島島内で構築することで、技術習得や高付加価値商品を生み出すことに繋がり、漁業の存続と今後の雇用につながると考えました」

「高齢化・過疎化・疲弊が進む中で、新たに資源を発掘することは困難であり、生活の中で価値のないとされている物を、価値あるもの(=商品)に変えることが重要と考え、これまで活動を続けてきました。さらに、お金だけを追いかけるのではなく、まずは小さな成果を積み重ね、協働の土台を作り進めるところに重点をおきました」

島の活性化に関わる取組の一つが、琵琶湖で駆除したブラックバスとブルーギルで作ったペット用おやつ「おさかなまるごと」づくり。外来魚の駆除と資源としての活用、島の新産業創出を狙った商品で、無添加の琵琶湖産天然素材を売りに販路拡大がなされています。ブラックバスにはタウリン、ブルーギルにはビタミンEが多く含まれるため栄養豊富なペットフードになり、好評を博しているそうです。

他にも沖島特産マツタケ復興に向けたプロジェクトや、沖島うなぎ祭りで湖魚のブランド化を推進。結果、観光客や商品売上の増加につながり、様々な面で成果をあげてきたが、最大の効果は島外に暮らす人が活動を手伝いに島に戻ってきたり、沖島の住民自体が沖島の魅力を再認識し自信を持つようになったことであると梶田氏は語ります。

「私が島と活動を始めた時は、『できるわけがない』『そんな事やった事もない』『なぜ漁師がそんな事をしないといけないのか』等々、とにかくこんな意見しか出ない。ペットフードも大反対をされながら少数メンバーで進めていきました。うなぎ祭りも同様に、多くの反対を受けてきましたが、ある時『いっぺんやってみようや』という声が会議場にあがりました。まさしく奇跡です」

「複数の成果が積み重なるにつれ『やればできる』につながり始めました。まだまだ数は少ないですが『こんな事やってみたいけど、どう思う?』という声が自発的にあがるケースも出てきました」

梶田氏の言葉から、前例のない事業を始めることの困難や、挑戦の必要性を発信し続け、ついには島全体を巻き込み一大ムーブメントを起こしてきた達成感と、一筋縄ではいかない“持続可能な社会づくり”の現場の奮闘ぶりが伝わってきます。地域の既存資源に光をあて、製造・販売・消費の循環にうまくのせていく。これができるかどうかが、日本の地域活性の今後を左右するのでしょう。

「今は『金のために地域を切り売りする』傾向が強いようです。いろいろ事情があるのでしょうが、地域を売ればその先はありません。私は『地域から生まれる生産物』を売ることが重要だと思います。そのためには地域の特産品を製造する活動(地産)、さらにそれを消費につなげる活動(地消)が欠かせません」

これからも島の魅力を損なうことなく付加価値を高め、見て・味わって・体験できるエコの沖島を目指していきたい、そのために資源の運用管理を行う法人を設立し、安定したサービスと後継者育成につなげていくとのこと。次はどんなプロジェクトが飛び出すのか、「沖島21世紀夢プラン」から目が離せませんね。

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続いて、島出身・在住の服飾デザイナー、奥村ひとみ氏のお話です。

「私が運営する工房『ドリームアイランド 汀の精』では、自然環境を破壊しない生きかたを考え、人に優しい商品開発を進めています。環境にも肌にも優しい天然繊維(綿・麻・絹)を中心とした洋服・小物のオリジナル製品を製作・受注販売しています」

高校を卒業後、大阪の服飾専門学校で学び、東近江市内の洋装店に勤めていたという奥村氏。現在の暮らしかた、働きかたに至るまでには、何かきっかけがあったのでしょうか?

「東近江市内に勤めていたころ交通事故に遭い、療養のため島に帰省しました。その時それまで気がつかなかった自然の豊かさに触れ、ここが自分の原点だという思いを強く持ち、2010年に工房を開きました」

「東近江の麻は昔から幅広く利用されていました。戦後大麻の規制から麻の原料は輸入品となりましたが、その丈夫さ、消臭力、紫外線カット力には素晴らしい魅力があります。沖島に戻り、環境や人に良いモノを作りたいと考えた私は、麻を使った製品づくりをしようと決めたのです」

生地染めにもこだわりがあるんです、と続ける奥村氏。植物はもちろん、炭で染めたり、琵琶湖の藻で染めてみたりと、環境を汚さないよう天然の媒染液を用いた製品づくりはとってもユニーク。「衣」のみならず「食」「住」にも活動の幅を広げるべく活動中で、沖島の野草を使ったお茶や塩を作ったり、野草の料理教室を開いたりとイキイキされています。そのパワーは一体どこから?

「沖島に戻ってから、体調が良いんです。水、空気、食べ物等、全てが体に良いんだと思います。車が一台もないから水鳥の羽音が聞こえるほど静かだし、動植物が自然そのままの姿を見せてくれる様子は何ものにも代えがたい。これからもこの沖島の魅力を発信していきたいですね」

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 午後3時、沖島に別れをつげ、参加者一同大津港への帰途に着きます。その船中で岡山市ESD 世界会議推進局の原明子氏が、2014年11月に岡山市で開催されたESDユネスコ世界会議に至るまでの歩みや各地域の課題についてお話ししてくださいました。

帰港後は明日都浜大津に会場を移し、この日最後のプログラム「学びあう交流会」が実施されました。まず、ESD指導者養成のスペシャリストである中澤静男氏が「観光は大人のESDである」と題してお話をしてくださいました。次に、中澤氏のお話をふまえて、この日沖島で学んだこと・発見したことを各グループごとにディスカッションしました。各参加者が「ESDの視点でみた沖島の魅力ベスト3」を発表しあい、最終的に何をグループのベスト3として発表しようか決めました。

私が参加したグループのメモには「美味しいビワマス!」、「都会にはない暮らし」、「ミニマム 〜必要最小限の暮らし〜」、「なんにもないこと」、「家と家の間の狭い、でも漁村の生活がかんじられる路」、「エコな暮らしのモデル」、「一度島を出た人が新しい風を入れている。変化・変革することを受け入れている」(奥村ひとみ氏のことですね)、「軒下にほされた玉ネギ」等々、わずか数時間の滞在の間にもたくさんの発見があったことが改めてわかります。沖島に暮らす人々にとっては当たり前のことが、島外に暮らす私たちの目にはこんなにも新鮮に映るのですね。どのグループもベスト3を絞りこむのに悩んでいる様子でした。

最終的に各グループの「ESDの視点でみた沖島の魅力ベスト3」とそれぞれの思いを、全参加者の前で発表しました。

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 ここで今一度、ESD(Education for Sustainable Development : 持続可能な開発のための教育)で私たちが目指していることを確認してみましょう。

今、世界には環境、貧困、人権、平和、開発といった様々な問題があります。ESDとは、これらの現代社会の課題を自らの問題として捉え、身近なところから取り組むことにより、それらの課題の解決につながる新たな価値観や行動を生み出すこと、そしてそれによって持続可能な社会を創造していくことを目指す学習や活動です。つまり、ESDは持続可能な社会づくりの担い手を育む教育です。ESDの対象となる様々な課題への取組をベースにしつつ、環境・経済・社会・文化の各側面から総合的に取り組むことが大切なのです。

この日の「未来を拓く人育て・環境学習交流フォーラム」では、沖島が抱える様々な課題と活性化に向けたユニークな取組について学びました。人口減少、若年層の都市部への流出、地域産業の担い手の減少、超高齢化……。沖島で起きていることはそのまま滋賀県の各地域、ひいては日本各地で現在起こっていることの縮図でもあります。これから私たちが目指すべき社会の姿とは何か。真の豊かさとは何か。どのように理想を描き、どうすればそこに近づいていけるのか。沖島を歩き、そこで持続可能な社会づくりに携わってきた方々の話を聞き、島の課題や魅力について語りあう。これらの学びから得たヒントをもとに私たちが生きる社会のありかたを考え、行動していくことがESDの第一歩なのです。

世の“断捨離”や“スローライフ”ブームが示すように、シンプルに生きることを求める人が年々増えています。どうすればより人間らしく生きられるのか、多くの人が模索していると言えます。人間が生きていく上で欠かせないおいしい水、きれいな空気、新鮮な食べ物。沖島にはそれら全てがあり、シンプルかつ充足した暮らしや、外とのゆるやかなつながりのありようは、今後の社会づくりを考えていくうえで一つのモデルになるでしょう。

琵琶湖博物館 環境学習センター 布川 恵理